ジコカイジ

self-disclosure‐‐‐乳がんのこと、仕事のこと、生き方のことを書いていく。

抗がん剤脱毛時のウイッグを考える②     医療用ウイッグを買いに。

 

ウイッグの購入はお早目に、

できれば抗がん剤前に。 

 

2017年7月に手術、抗がん剤は色々と考えるところがあって8月に入ってから始めた。抗がんを始める前に、やっておきたいこと、会っておきたい人たちがいた。抗がん剤で体調が乱れること、体調が整うのにどれくらい日数が必要なのかなど、見当がつかなかったからだ。

 

やっておきたいことのひとつには、ウイッグの購入もあった。様々なウイッグショップを検討し、試着の予約を入れようと思ったところ、どこも予約で埋まっているではないか。結局、初回の抗がん剤投与の2日後しか予約が取れず、フラッフラになりながら向かったのである。

 

体調が悪くて外出できなければネットショップでも購入できるが、できれば初回は試着するのをお勧めしたい。そして予約はお早目に。初回抗がん剤の前に行っておいたほうがよいかと。

 

ウイッグの試着をしに行く。

 

私が試着に伺ったのは「アクアドール東京」。

東京-医療用ウィッグ・ヘアピース専門店 御徒町・上野駅すぐ|アクアドール

 

 

大阪に本店があり、数年前東京サロンをオープンしたというお店。初めてウイッグを購入するので、どうしても試着できるショップに行きたかった。店内にはウイッグがずらり。そこから選んでもよし、私はあらかじめショップのサイトで目星を付けておいたものを出してもらった。

 

 

 

ファンシーな雰囲気の試着室は2室。どちらもプライバシーが保たれている。たとえ脱毛してしまってから行っても、担当のショップスタッフ以外に見られることはない。自分の気の済むまで試着できたし、ウイッグのかぶり方、扱い方なども教えてもらえる。

 

いくつか試着した中でこの時購入したのは、これのショコラブラック。

 

 モデル着用色は明るすぎ、もっとも暗い色のナチュラルブラックでは重いかと、ショコラブラックにした。

 

ウイッグの下にかぶるインナーキャップ、ウイッグスタンド、ブラシ、手入れ用のスプレーなど、初回なのでお手入れグッズも合わせて購入。

 

 

そもそも医療用ウイッグとは。

 

そもそも医療ウイッグとはなんぞや?

医療用ウィッグ・かつら| ウィッグ・エクステの専門店アクアドール(AQUADOLL)公式通販サイト

 

上記サイトを見ると、実は特にはっきりとした基準などが設けられているわけではないという。

今現在、医療用ウィッグ(かつら)のはっきりとした決まりがあるわけではないのですが、最近、医療用ウィッグ(かつら)もJIS規定によって性能基準が明確となりつつあります。もちろん当社の医療用ウィッグ(かつら)はJIS認定されているので、安心してご使用いただけます。 

 

医療用ウィッグ(かつら)は肌への負担の軽減や、長時間つけても疲れにくい「軽さ」、蒸れにくくするための通気性の良さ、つけていても他人からウィッグだと気づかれにくい自然さ、などを考えて作られています。

医療用ウィッグ(かつら)の特徴
つむじ・植え方が自然/インナーネットが柔らかく・肌への負担が少ないもの/毛質が自然/軽い/通気性がいい など

アクアドールサイトより引用。

 

つむじ部分のスキンネットが自然に見せるポイント

 

このウイッグ購入から4か月後の2017年年末に、いわゆるファッションウイッグを購入したところ、その差がなんとなくだが見えてきた。最も大きな違いは、つむじの作りと植え方なのだと思う。

 

私が購入したウイッグのつむじ部分を見てほしい。

 

上部から見たところ。

つむじや髪の立ち上がりの表現がなかなか自然。

手植えならでは。

 

 

 

内部から見たところ。

 つむじ部分のスキンネットの範囲を広く取っているのがわかる。

(縦長の透けているネット部分をスキンネットという)

 

アクアドールの医療用ウイッグの特徴は、このスキンネットの部分が広く取ってること。もっと安価なファッションウイッグの場合、スキンネット部分が小さく、つむじから前髪の分け目を自在にスタイリングすることが難しいのだ。

たとえば、右分けが好きだから右方向に前髪を流そうとする場合。スキンネット部分が小さいと、通常のネット部分が外側からはっきりと見えてしまうという難点がある。

 

その点、このウイッグは私の好みの方向へ自然に分け目を作ることができた。どの方向へ前髪を流しても、スキンネット部分が地肌を表現。上部から見られても自然なつむじに見えるのだ。

 

医療用ウイッグの豊富さに隔世の感。

 

17年前に初回の乳がんになったときは、完全に脱毛はしなかったため、ウイッグを購入するには至らなかった。ウイッグがあればとは思ったのだが、なんといって高額だったため手が出なかったのだ。人毛ミックスのもので最低でも10万円以上した。グレードのよいものだと20万~30万。

 

3年前に妹が抗がん剤治療を始めて、ウイッグを購入したとき、バリエーションの豊富さ、価格と品質の高さに驚いた。妹には人毛ミックスのセミロングのボブスタイルのものを購入したが、それでも約4万円だった。

 

私がこの時購入したファイバー製(人工毛)でなんと 19,224円。や、安い!

ファイバーのテカテカ感もなく、触り心地も自然。手入れもラクで抜け毛もない。これなら髪が元通りになるまでに2~3個買い替えてもいいではないか。ウイッグの進歩はすごい。

 

やはり脱毛前に用意しておきたいウイッグ。

 

購入しに行ったときには、まだ実際の脱毛はしていなかったが、初回抗がん剤からきっかり2週間後には脱毛が始まったのだった。脱毛が始まると、移動中にも髪がハラハラと脱落していくため、やはり事前にウイッグを購入していて良かったと思う。

 

実際かぶるとこんな感じに。思っていたより、外光の元だと髪色が明るく見える。

 

 しかし気が付くと生え際がおかしな位置にまでずり上がっていたりして、驚くことがある。ウイッグ修行の道はまだまだ続く。

 

 

 #医療用ウイッグ #アクアドール東京サロン #脱毛 #抗がん剤

 

がん治療後の生活ーーー生活を取り戻すまでの焦り。

意外に元気。だけれども。

 

2017年7月に手術、8月から2018年2月まで抗がん剤、3月から4月まで放射線治療と、9か月間におよぶ治療が一段落ついて約1か月がたった。抗がん剤にの副作用による胸部痛、筋肉痛、手足のしびれなどは残ったが我慢できる程度であり、意外と元気である。

 

まあまあ元気に過ごせるので、調子に乗ってスケジュールを詰めていくと、3日後あたりにガクンと体調をくずしまた寝込む。自分の元気さに自分が騙される格好となる。なんでこれくらいで?と自分でも腑に落ちない。

 

だからいまは自分の元気を過信しない。スケジュールを詰め込まず、アポイントは1日に1つだけにする、外出した翌日は自宅で過ごす、など、ゆったりとスケジュールを組むことにしている。

 

思うようにならないことを許せるか。

事態が動くまで待つことができるか。

 

治療が終わったから、当たり前だが、もう私は患者ではない。この日が来ることはわかっていたから、従来のライターの仕事も、そしていま、こうしてがん治療のことをメインにブログで書いていることも含めて、拡大していきたい考えて、それなりに準備してきたつもりだった。でも私の願いとは裏腹に、なかなか事態は動かない。

 

行動することはたやすい。思いがあれば、体調が少々芳しくなくても、できることをする。ただ、蒔いた種のために毎日水やりを続けられるか。芽吹くまで待てるか。私は種を蒔くことまでは難なくやれるのだが、待つことがどうも苦手なのだ。

 

がん治療後の生活に必要なのは、気長に待てる精神力と経済力である。

 

待つことが苦手な私は、なんとか事態を打開すべく、たくさんの人と会い、私のことを知ってもらうことに努めている。がんのことや体調のことなども避けず、なんでも率直に話す。ところがその率直さが災いもする。率直に伝えるほど、引かれてしまうこともある。近しい人でさえ私に食傷しているのがわかる。耳がふさがれているのがわかる。申し訳なく思うが、食傷している様子を見るのは寂しい。

 

どうやって、がんサバイバーは生活を立て直していけばいいのだろうか。私も生活を取り戻したい。私の生活を経済的に成立させたい。治療後の生活を見据えて準備してきたのに、まだ何もできていないことに私は焦っている。

 

 

 

 

 

 

乳がん #がん治療後の生活 #がんと就労 #がんサバイバー 

 

 

 

 

 

抗がん剤脱毛時のウイッグを考える①     脱毛が苦痛なのは女性だけ

抗がん剤の副作用で一番の悩みは、脱毛。

 

抗がん剤の副作用と言えば、脱毛が真っ先に挙げられるのではないか。しかし、これは女性に限ってのことらしい。

 

2009年に国立がん研究センター中央病院が実施した「抗がん剤治療による副作用の苦痛度」というリサーチがあるのだが、副作用の苦痛度は男女でこんなに違うのかと知り、心底驚いたのだ。

 

www.jiji.com

 

女性の1位は頭髪の脱毛、2位吐き気、3位しびれ、4位全身の痛み、5位便秘、6位まつ毛の脱毛、7位だるさ、8位まゆ毛の脱毛、9位足の爪がはがれた、10位味覚障害となっている。

 

男性はどうか。1位全身の痛み、2位吐き気、3位発熱、4位口内炎、5位しびれ、6位便秘、7位下痢、8位頭痛、9位だるさ、10位足のむくみ、と続く。

 

驚きませんか? 男性の場合、10位内に頭髪の脱毛が入っていないということに。では男性で頭髪の脱毛が出てくるのは、何位なのかというと、なんと、18位なのである。

 

男は脱毛を気にしない。だからか???

 

今回、私の抗がん剤治療は2度目になる。前回も今回も、頭髪の脱毛が与えた影響は大きかった。今回は完全に脱毛してしまったため、抗がん剤が終わった現在もウイッグは必需品である。

 

17年前に脱毛したとき、医療用ウイッグは最低でも10万円以上する高額なものしかなく、厳しい経済状態にあった私は、ウイッグを購入することはできなかった。保険適用もしくはせめて医療費控除を受けることができれば購入できるのに、と残念に思っていた。

 

そして昨年、また抗がん剤治療を始めたとき一番驚いたのは、医療用ウイッグのバラエティが豊富になったこと、そして手ごろな価格のものが圧倒的に増え、クオリティも格段に向上していたことだった。だが、保険も適用されず、医療控除の対象にもなっていないことだけは、17年前と同じだった。

 

保険も適用されず、医療控除の対象にもならないということ。それはやはり、頭髪の脱毛を気にする男性が少数であることと関係するのだと思う。厚生労働省も、国会議員も、製薬会社も、医師も、男社会であって、自分たちが抗がん剤治療したときの苦痛の上位に頭髪の脱毛はないのだから、それに対してのソリューションを考えようとはならないのか?と、うがってみたくなる。

 

 

抗がん剤終われば生えてくるんだからいいじゃない

 

通常、抗がん剤が終わってから1年~1年半くらいはウイッグが必要となるし、抗がん剤治療が長くなる人の場合は、ウイッグを使用する期間も長くなる。

 

私の場合、現在2つのウイッグを持っていて、それを代わる代わる使用している。頭はかなり汗をかくし、食べ物ののにおいなども付きやすい。自毛と違って毎日洗うわけにもいかないため、手入れを工夫しながら使っている。いまはモンチッチくらいの長さしかないので、普通にスタイリングできるようになるまで、あと1年以上はかかるだろう。ウイッグ生活はまだ続く。

 

これだけがんに罹患する人が増えているのだから、ウイッグについて、また脱毛を予防する機械や薬剤の開発などにも、もっと注力してもらえないだろうか。そのためには、私を含め、患者やサバイバーももっと声をあげなくてはと思っている。

 

そして、また生えてくるんだから、とかけられる言葉について言いたい。それについて悩んでいるのではないのです、と。生えてくることは知っているのだ。私たちがくよくよするのは、生えてくるまで、普通にスタイリングして外出できるまで、その間をどうやり過ごすのか、それが問題なのだと。

 

で、脱毛に関すること、ウイッグや美容について書いてみたいと思っている。つづく。

 

 

 

 

 

 

 

抗がん剤 #副作用 #ウイッグ #脱毛

 

 

YOUは何しに博士課程へ?① 

去年博士課程に進学し、谷崎潤一郎を研究中。

 

昨年、アラフィフ真っ只中の年齢にして、大学院博士課程へ進学した。日本文学専攻で谷崎潤一郎を研究している。谷崎は古典と親しく、作品の多くに歌舞伎や文楽などをモチーフとしていることはよく知られているが、どの作品のどの部分にどれくらい用いているかなどを調査する、谷崎作品の原典研究という研究をしている。

 

歌舞伎好きであることが研究に生かされるとは予想していなかったし、第一、谷崎潤一郎を研究していくことになるとは夢にも思っていなかった。偶然が重なってこうなった。自分の愛するもの2つのもの、谷崎と歌舞伎をコネクトさせ、研究テーマとして発見したことが、私の幸運である。

 

が、いきなりがんになって

 

現在D2。しかし、ご存じの通り昨年6月にまた乳がんになってしまい、かろうじて休学せずに現在に至る状態で、研究ははかどっていない。仕事もしていないから収入もないし、必死になって今年の学費を捻出した。なんなんだよまったく。

 

このことはまた別稿で書きたい。

 

 

『摂州合邦辻』と『春琴抄』--- 関西文化の豊かさの血脈

 

というように、進学して足踏み状態なのだけれど、拙稿「『春琴抄』典拠再考ーーー『摂州合邦辻』から『春琴抄』への生成を主にーーー」が、法政大学大学院2018年3月発行の「大学院紀要80号」に掲載された。修士論文をコンパクトにしたものだ。

 

どのような内容か短く言うと、『春琴抄』は『摂州』を典拠としており、舞台となった大阪・道修町にモデルとした家があったこと。関西に居を移し、松子夫人というミューズを得て、関西で作家として生きていくということを宣言する作品であることを検証した、というものである。

 

道修町にモデルしたお家があったことを証明するのが『摂州』なのだけれど、谷崎のエッセイ「所謂痴呆の芸術について」で、あれだけ酷評した『摂州』をどのように『春琴抄』に昇華させたのか、その思惑を推測するオモシロ(いやトンデモかも)論文。

 

しかし、谷崎が『春琴抄』以前の作品より深く、関西文化へ足を踏み入れていく、その中で生きていくことを決心した作品であることは間違いないと思う。

 

拙稿のお話しをさせていただき、谷崎を、大阪、道修町の豊かな文化をもっと知ってもらいたい、というのが私のいまの夢のひとつ。もし大阪・道修町の街おこしに使っていただければ嬉しい。

 

 

抜き刷があります。

ご高覧いただける方、ご連絡いただければ幸いです。

 

 

谷崎潤一郎 #春琴抄 #摂州合邦辻

血は水よりも濃いーーー「THIS IS US シーズン1」を見て

「THIS IS US 36歳、これから シーズン1」がAXNで放送されるのだ。

 

 で、その先駆けとして、GWに一挙放送があり、まんまと見たわけである。

 

 私はこれを見るのは2回目なのだけど、初回に見た感動が薄まるどころか、今度は1度目には気付かなかったシーンや、言葉の意味などを発見する驚きとともに、しみじみと味わうこととなった。月並みだが2度美味しい。きっと3度目もまた違った美味しさがあるのだろう。

 

このドラマは、絶対に絶対にシーズン1の第一話から見てほしいので、詳細は書きたくないが、2度目に見た雑感を書いておきたい。

 

ある3つ子の生まれる時点から物語ははじまる。ケヴィン、ケイト、カイル(ランダル)、全く異なる資質を持つ3つ子。この3人を主に、異なる時間軸、空間を並行し、さらに行きつ戻りつし、家族の実像が描かれていく。それぞれが異なる職業に就き、悩みながらも自分で人生を切り開いていく姿が描かれる。

 

 

本当に自分の意思なのか否か。

 

ふだん、私たちは一瞬一瞬を自分の意思で選択し、その連続で生きている、と思っている。しかしTIUを見ていると、どうも100%そうだとは言い切れない、血は水よりも濃いし、生育歴からも逃れられない。それが何世代にも渡って続いていくということを見せつけられる。

 

TVスターのケヴィンはコールガールと適当によろしくやっているような軽薄男と思いきや、実はハイスクールスイートハートの元妻を一途に愛し続け、体重管理がまるでできなくて自信のないケイトは素晴らしい歌声を持っている。ランダルは経済的にも社会的にも成功を収めているが、優しく柔らかい心を持っている。

 

ケヴィンの一途さは父親から、ケイトの自信のなさと歌声は母親から、ランダルの賢さと優しさは実父から受け継いだもの。

彼らの資質も悩みも、形を変えながら、それぞれの世代の肉体を乗り物に、世代を超えて、いま彼らが体現し体験しているのだ。

 

ケヴィンがランダルの娘たちに、自分が描いた絵を説明するシーンがあるけれど、あれは、自分たちのファミリーヒストリーに限定せず、アメリカという国に移民たちが根を下ろし、自分たちと脈々と流れている生をまざまざと見せたのだ。アメリカという国をモザイクのように形作るのは、最小の社会である家族であるということ。

つまりこれ、トランプへのNO!なわけだ。

 

私の中から湧き上がる思いは、私そのものだと信じているが、その根源の所有者はわたしだけではないという事実を思う。

 

アメリカンサーガ、オズの魔法使い

 

これは最近気が付いたのだけど、メインの3人がそれぞれ異なる悩みを持ちながら成長していく、ってやっぱり「オズの魔法使い」をベースにしているのでは。人種問題やアディクション、セレブ志向世代間問題など現代アメリカを描きながら、アメリカンサーガを引いているあたりが、よく考えられた脚本だと感心する。

 

オズの魔法使 [Blu-ray]

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#THIS IS US #オズの魔法使い

 

 

 

 

 

抗がん剤治療とヘルプマーク

ヘルプマーク、抗がん剤治療者も付けています。

 

ヘルプマークをバッグに付けて外出するようになったのは、抗がん剤治療中からだから、かれこれ半年以上になる。抗がん剤の副作用である強い倦怠感、手足のしびれ、筋肉痛、吐き気などの症状があるときに、交通機関を利用する不安は大きいものだ。そのとき、ヘルプマークを付けていることで、なにかあれば援助をお願いできると思うと、心強かった。実際に、電車の中で親切に席を譲ってくださる方もいたが、嫌がらせ?と思うようなことにもあった。

 

 

exgirlfriend.hatenablog.com

 

 

 

座らせて!と主張しているわけではないのだ。

 

私の通う病院は我が家からは1時間半はかかる。行きかえりに使用する東海道線、山手線の混雑時間帯にぶつかるのをなるべく避けてはいたが、抗がん剤の投与に時間がかかると、夕方ラッシュのピーク時間帯にぶつかってしまう。

 

東海道線の行きかえりは770円支払ってグリーン車に乗ればいいのだが、山手線の混雑はいかんともしがたい。意を決して乗り込む。たった2駅なのでなんとか頑張る。もし、耐えられないほど体調不良であれば、電車を降りるようにしていた。

 

私がヘルプマークを付けているのは、混雑した山手線のたった2駅を座らせて!と言うためではない。その2駅はなんとか頑張れるし、もし無理ならそもそも乗らない。

 

普通席が空いているいるならそこに座るが、もし私が優先席に座っていても許してほしいのだ。そして万が一、公共の場で私が自分で対処できないほどの体調不良にみまわれたとき、ヘルプマークを付けていることで、私がなにかの疾患を持っている人だ、と認識して、声をかけてほしかったのだ。

 

 

ヘルプマークのサイトを見ると

 

 

www.fukushihoken.metro.tokyo.jp

 

援助や配慮を必要としている方々が、そのことを周囲の方に知らせることができるマークです。 

と記載されている。

 

どんな人に配っているかといえば、

 

ヘルプマークの対象者は、義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、妊娠初期の方など、援助や配慮を必要としていて、配布を希望する方々です。 しかしながら、身体機能等に特に基準を設けているわけではありません。

見た目では判断できないが、なにか障害や疾患を持っている人を対象としている。抗がん剤治療中のがん患者もここに含まれるだろう。

 

また、一時期メルカリなどで1つ1000円で売買されていたけれど、これはあくまで無料であることも明記されている。

 

ヘルプマークの配布に当たっては、必要な都民の方々が円滑にマークを活用することができることに配慮し、特に書類等の提示は必要なく、お申し出に対しお渡しすることとしています。
マタニティマークと同様、御家族等が代わりにいらっしゃる場合も、お渡ししています。

 

東京都であれば、以下の場所で配布している。

都営地下鉄各駅(押上駅、目黒駅、白金台駅白金高輪駅新宿線新宿駅を除く)駅務室、都営バス各営業所、荒川電車営業所、日暮里・舎人ライナー(日暮里駅、西日暮里駅)駅務室、ゆりかもめ(新橋駅、豊洲駅)駅務室、多摩モノレール多摩センター駅中央大学・明星大学駅高幡不動駅立川南駅立川北駅玉川上水駅上北台駅)駅務室(一部時間帯を除く)、東京都心身障害者福祉センター(多摩支所を含む)、都立病院、公益財団法人東京都保健医療公社の病院等

 

東京都以外では、

京都府和歌山県徳島県青森県奈良県、神奈川県、滋賀県大阪府岐阜県、栃木県、広島県など、全国での取組が広がりつつあります。2017年9月末現在、更に全国に広げていくために、関係各所に働きかけているところです。

 

2017年3月末で約165,000個配布したそうだが、まだ全国での普及は遠い。東京でもこのマーク自体知らない人のほうが多い状況だ。地方に住む友人へヘルプマークを送付したこともある。

 

このマークがなくても、助け合う気持ちを発揮できる世の中になるのが理想だ。

 

www.youtube.com

 

 

 

 

私の主治医は近藤誠医師でしたがなにか。

 

近藤誠医師のところで治療したと知るやいなや、

烈火のごとく怒られる私。

 

最初に言っておきます。私は近藤シンパではない。いまの近藤誠医師の言動に支持できるところはない。

 

でも2001年当時、日本中から乳房温存療法を求めて、多くの乳がん患者が慶應の近藤外来に集まってきていて、私もそのひとりであった。そこにはいまとは少し違う近藤誠医師がいたと思う。私は、近藤誠医師の元で希望した通りの治療ができたし、17年間再発もしていない(2017年の右乳房のがんは原発である)。

 

 

捨て台詞オブザイヤー2001

絶対10年後生きていないから!死んでるから!

 

ふだん、風邪や皮膚炎やケガ、虫歯などで、病院を受診する際に既往歴を尋ねられたとき、左乳がんの治療時に当時慶應の近藤誠のところで治療した、と言うやいなやほぼ全ての医師が烈火のごとく怒り、私が謝ってその場を収めなければならないという理不尽な状況を作るので、それが面倒くさくなって、近藤医師のところは端折って話すことにしている。

 

そもそも、最初にがんと診断してくれた医師に、セカンドオピニオンを聴きに近藤誠のところに行くと告げると、君はここに戻ってこないよ。近藤に口当たりのいいこと言われて、近藤のとこで治療するんだよ。でも君は絶対10年後生きていないから!死んでるから!と捨て台詞オブザイヤー2001を投げつけられたのである。

 

でも私は、2001年のときに受けた乳がん治療にとても満足していて、その満足は何かと考えると、それは乳房温存手術の低侵襲性にあるのだった。近藤誠医師が手術したわけではないので、手術をしてくれたA医師のおかげなのであるが、にしても、近藤医師とA医師という両輪がワークしてはじめて、2001年に実現できた治療であったと思う。16年間生存したという結果も含めて。

 

 

命と胸、どっちが大事?

両方に決まってるじゃないか。

 

2001年当時、命と胸、どっちが大事?とか、胸見せて外を歩くわけじゃないとか、医師も周囲も私に言った。命も胸も大事に決まっているではないか。34歳でそのどちらかを手放してよいと思えるようなエッジの効いた精神で生きていなかった私は、どうしてもどうしてもその両方を可能にできる方法を探して、たどり着いたのが近藤誠医師の著書「乳ガン治療あなたの選択ーー乳房温存療法のすべて」であった。

当時の近藤医師は、乳がん患者会イデアフォーの勉強会などにも積極的に参加され、啓蒙活動に努めていた。

 

そして捨て台詞オブザイヤー2001をものともせず、近藤外来へと吸い込まれていったのである。

 

乳ガン治療あなたの選択―乳房温存療法のすべて

乳ガン治療あなたの選択―乳房温存療法のすべて

 

 

 

もう一冊、とても参考になったのは、中浜潤子「乳ガン医師選択権(ドクターズショッピング)」だ。これは、ワインジャーナリスト中濱潤子さんの乳がん治療記であるとともに、温存療法の種類や抗がん剤のこと、当時温存療法を積極的に実施されていた医師のインタビューや医療機関リストまで網羅しているという、素晴らしいお仕事である。古くなった部分も多いが、セカンドオピニオンQOLの重要性など、今でも十分に参考になる考えを示されている。絶版なのが残念。

 

乳ガン 医師選択権(ドクターズショッピング) (小学館文庫)

乳ガン 医師選択権(ドクターズショッピング) (小学館文庫)

 

 

結局、気が付くと私は中浜さんと同じ、近藤誠医師からA医師の所属するO 病院へ送り込まれ、温存療法、抗がん剤放射線と受けることとなった。

 

 

近藤外来で満足した人は、目的が明確な人。

良くも悪くも。

 

近藤外来の様子については、また別に書きたいと思っている。毎週水曜日、慶応病院地下の放射線科が、女性だらけになり、座る場所もないほどの盛況だったこと、A医師のO病院も同じくそうだったこと。そこに集まる個性豊かな女性たちのこと。忘れえぬ出来事がたくさんあった。

 

近藤外来(およびA医師)で私が満足したのは、目的が明確だったからだと思う。手術するのはいい。だけど、私はどうしてもくりぬきの温存手術がしたかったのだった。手術痕が残ってもいい。でもそれはあくまで目立たないもので、それが異性であれ、同性であれ万が一他人に見られても決してグロテスクでなく、気にならないものであることを目指した。

 

なにより、治療が終わってから、私自身が毎日この体を、否が応でも見る。もし満足していない手術だったら、私は自分の体に目を背けるのか。精神的に強くなって直視できるようになるのか。そして私がそれを嘆いたら、人は私を自己憐憫と言って馬鹿にするのか。もっと強くなれというのか。結局、治療後は自分で何とか生きびろ、と言われるのである。

 

私はこの体で生きていかなければならないので、低侵襲で、エステティックであることをなによりも望み、そして叶えた。だから満足しているし、10年後生きていないから!という呪いにも勝った。

 

近藤外来で満足した人というのは、何を目的にするかが明確なのである。私にとっては低侵襲な手術であり、ある人は抗がん剤をしないことであり、手術を断固拒否した人もいる。それは、誰にも理解されなかったとしても、その人だけのこだわりを明確に伝えて、それが可能だった人が近藤外来で満足を得た。

 

近藤医師の言葉を信じて、問題になっている方の多くは、がんの恐怖と治療の恐怖を混同されている方たちが多いような気がしている。そういう意味ではまったく万人向けではない。そもそも、がんの恐怖と治療の恐怖、治療後の恐怖が綯交ぜになっているのが、がん患者なのであるが、そこを腑分けしていって、自分の望みを知るというのは本当に難しい。だから34歳の私、ちょっと頑張ったな、とほめてあげたい。

 

2001年当時なら、まだwebで気軽に検索して情報を得ることが出来なかったから、近藤医師の著作を鵜呑みにしてしまうこともあっただろうけど、情報はいくらでも取りにいける2018年のいま、近藤医師の主張を鵜呑みするというのは、がんの恐怖と治療の恐怖を混同し未分化のままにしているのと同じだ。死ぬのは怖い。抗がん剤などの治療も怖い。そして安易に近藤医師を信じてしまう。

 

とはいえ、最初にがんってわかったとき、これっぽっちも冷静に考えることなんてできなかった私が偉そうに言えるものではないのだけど。ケガでオリンピック2連覇を心配されていた羽生結弦も、オリンピックの勝ち方を知っているので、と言っていたが、私も乳がん治療を知っているいるので、2度目は割と冷静だった。と、ユヅと同列に語ってみた。

 

近藤誠医師は、そもそも痛い人ではあったのだけれど、やはり分水嶺となったのは、A医師との決裂だったのであろう。あれから近藤医師の迷走が始まったように思う。

 

近藤外来および、A医師の元に日本全国から集まった乳がん野良患者のことなどは、また改めて書きたい。いま思い出すとカオスだったなー。

 

#近藤誠 #乳がん #乳房温存療法